私達が引き継いだ、美しい街岡本協議会の聞きたい・語り継ぎたい、歴史・変遷・想い
前号・前前号で予告の、美しい街岡本協議会40周年記念企画「大先輩へのインタビュー」を実施しましたので、本紙にてご報告いたします。
今回は、初代会長時代から長きにわたり幹事を務められた前副会長の林祥一氏、前会長の橋谷惟子氏にお話を伺いました。
■ 美しい街岡本協議会の発足は色々重なった結果の必然だった?
協議会発足前、昭和40年代後半頃から、マンションが次々に建設されたり、近隣の甲南大学、甲南女子大学、神戸薬科大学の規模が大きくなっていったりと、街の様子は急激に変化しはじめました。そのうちに、摂津本山駅と岡本駅の距離が近いことや、近隣に大学があり学生が歩く街の雰囲気が好まれ、ケーキ屋、パン屋、美容室などの店が増え、おしゃれな街としてよくマスコミに取り上げられるようになりました。
マスコミに取り上げられたことで、なんとなく街の雰囲気が変わってしまったと感じていました。そんな時、摂津本山駅近くで改装中の店舗がパチンコ店になるのではないか!?との噂が聞こえてきて、自治会がないため誰がどう対応するのか右往左往し慌てて工事現場に問い合わせるなどしました。パチンコ屋の噂はデマだったので事なきを得ましたが、街が発展し変化していくことへの危機感を覚え、自治会のような組織が必要ではないかと考え始めていました。
一方、ちょうど同じ頃、神戸市の施策として、市民主体のまちづくりを打ち出し始めました。昭和56年「まちづくり条例」が制定され、北野、旧居留地、南京町、岡本の4地域にまちづくり協議会設立の白羽の矢が立てられました。
また、昭和57年の用途地域の見直しに際し、岡本駅から摂津本山駅の間の一部エリアが近隣商業地域に指定されました。これにより、商業ビルやマンションが増えることも予想されました。
このように、時代の流れにより街が発展し様相が変化してきたこと、地域に自治会がなかったこと、神戸市施策との一致、など様々な要因が重なり、昭和57年9月、美しい街岡本協議会が発足しました。
(※注)当協議会エリアには自治会がありません。神戸市に編入される以前、この辺りは本山村でした。村の名残りとして森・中野・小路・北畑・田邊・岡本・田中・野寄の8つの財産区があります。
■ 初代・西崎会長時代建物の建て方等のルール策定と道路拡幅等ハード整備の検討
発起人及び初代幹事は地域各団体のトップと土地・建物所有者等が主となり、会長には西崎敬四郎先生が選出されました。
神戸市から、まちづくりコンサルタントの派遣を受け、コンサルタントの支援のもと、建物の建て方等に関する3つのルール(岡本地区まちづくり協定、岡本地区地区計画、岡本駅南都市景観形成地域)の策定に取り組みました。これらのルールがあるから岡本は今も美しい街であり続けられていると思います。当時は市の先導と手厚いバックアップもあり、比較的スムーズに策定できたことは幸運だったと思います。
その他に西崎会長時代の主題となったのは、南北道路(岡本駅東の踏切から山手幹線までを南北につなぐ道路)の拡幅整備の検討でした。街の発展や狭小な道路幅員等による交通混雑や危険性が問題視され、その解決策として掲げられたものでした。阪神・淡路大震災後に第2期構想案も策定し注力しましたが、各論での理解が得られず、断念、実現には至りませんでした。
ハード整備で実現したこととしては、山手幹線の無電柱化、街路樹ハナミズキの植樹を山手幹線拡幅時に市に提案したことなどがあります。また、クリーン作戦、花壇活動などのCGF(クリーン・グリーン・フラワー)作戦、他団体との共同活動も盛んに行いました。
■ 二代目 橋谷会長時代 PR活動等ソフトのまちづくりと屋外広告物ルール策定
平成18年、長年にわたり役を務めてきた幹事の大半が退任、新しい顔ぶれも多数加わり、二代目・橋谷会長時代に入りました。
橋谷会長時代は、ハードからソフトへ、まちづくりの方針転換を図りました。前述の既存ルールの地元での運用体制づくり、岡本商店街振興組合との連協・協力体制づくり、協議会の存在&活動のPR活動(季刊報の発行・配布、イベントの企画・実施)等の様々な取り組みを展開しました。
平成21年には、まちづくり協定を変更しました。地区内でマンション建設計画が浮上、周辺住民からゴミ問題が提起されました。これを受け「集合住宅建設時にはゴミ
置き場設置に関し、当協議会との協議が必要」という主旨の条文を追加しました。併せて「もっと美しいまちづくり宣言」を採択し、生活マナーや営業マナーなどをソフト面の岡本ルールとして明文化しました。
その後、近年最も注力したのが「岡本版・屋外広告物ルール&ガイドライン」の策定です。西崎会長時代から、広告物が景観に与える影響については認識していましたが、神戸市全域にかかる屋外広告物条例だけでは、私達の手のひらサイズの街・岡本の景観は守り切れないと強く感じ始めました。
そこで、岡本らしさ、岡本に似合う看板の特徴、地区内看板の大きさや色についての調査・整理・議論を重ね、種別・設置位置・大きさ・文字サイズ等のルール案をまとめました。ルール案をもとに、商店街振興組合との協議、店舗・住民の皆さんへの説明・周知活動、アンケート調査を経て、平成26年5月、「岡本版・屋外広告物ルール&ガイドライン」策定(総会承認)、平成28年3月景観計画変更(追加)施行となりました。
また、摂津本山駅橋上化の際には、各種地域団体と協力し、地域情報発信コーナー、エスカレーター設置、シンボルツリー植樹、本山七不思議などの実現に尽力しました。
■ 三代目・足立会長 次世代のまちづくりに期待すること
第一は、岡本版・屋外広告物ルール&ガイドラインの運用をしっかりと行い、ルールに魂を入れていくことです。屋外広告物に限らず、どんなルールも作って終わりではなく、運用していくことが肝心です。
しかしながら、各種ルールの運用など、これまでのまち協の活動を以てしても、魅力の維持もしくは魅力の低下をなんとか防いでいるだけではないかと感じています。
三宮や大阪から帰ってきた時に街が暗く寂しい印象があります。10年前は住みたい街ランキングの上位でしたが、今はそうでもありません。他所が良くなっていっているのに岡本は停滞しているのではないかと考えています。
新しい世代の新しい力で、岡本らしさを守り育てながら、活気と魅力溢れる街を目指してほしいと思います。
少し大きな話、ハード面の話になるかもしれませんが、みんなが自由に使える、大人も子どもも安心して過ごせるような交流の場が今の岡本には必要ではないかと考えています。岡本一丁目には昔から公園がなく、人が溜まれる場所がありません。
地域に根ざしたコミュニティを強化することが、まちづくりには重要です。コミュニティ強化は、安全安心、地域活性化、わがまちへの愛着や誇りにも繋がります。
ぜひ、この夢を叶えてもらいたい!これからに期待しています。