多様な形、可能性、視点 naddistのまちづくり、「看板屋」のまちづくり 

■まちを楽しもう まちで遊ぼう (慈さんのお話から)

最初に始めたのは、ナディズムというフリーペーパーの発行です。ナディズムは、灘nadaとismで灘主義という意味の造語です。続いて「ナディスト」というメールマガジンなど、灘のことを発信していました。活動を続けるうちに、「まち(灘)を楽しもう」という同じ思い人が増えてきたので、まちを楽しむ、まちを知るツアーやイベントを開催するようになりました。
組織とはちがったアプローチで、個人でまちに関われることはないかと考え、活動してきました。活動のほとんどは、誰かに頼まれるわけでもなく、勝手に、やりたいと思ったことをする、勝手にやるけれど、ルールは守ってまち遊びをしています。市バス車窓案内ツアーでは、普通に走っているバスに乗るので、運賃を払いますし、乗車マナーも守ります。灘駅で本を読む日の入場券は、普通入場券だから制限時間は2時間以内としました。東神戸マラソンは信号や交通ルールを守ります。
企画を考えていて、やるかやらないかは、面白いかどうか。面白そうだと思ったことは、まずやる。失敗もたくさんありますが、とにかくやってみること、灘愛と、大人げないことを大人なのに思いっきり楽しむことを大切にしています。
まちの遊び方(ほんの一部の例)
23-1六甲有馬ロープウェーのさよならイベント
休止されようとしていたのを知り、さよならイベントを勝手に(運営の神戸すまいまちづくり公社に頼まれたわけでも、共催でもなく)実施

灘印良品

メイドイン灘区の目立たない物セレクトショップ。業者や製造元に依頼されるわけでもなく、勝手に定価で買ってきて勝手に定価で売る

 
23-2摩耶山リュックサックマーケット
※リュックひとつあれば誰でも参加 できるフリーマーケット。毎年3月から11月の第3土曜日開催。 リュックに入れて持って来ることができる分だけにしてくださいという制限のみ。出店料不要、飲食 物以外の出店は事前申込不要

灘駅で本を読む日
灘駅橋上化工事の前に旧駅との別れを偲び、駅にゆっくり滞在する、駅を空間として味わうための企画。参加者は入場券とコーヒーを買って構内で本を読むだけ、電車が来ても誰も乗らない不思議な光景。予告なしの朗読会も開催
※先行して、去り行く駅舎への思いを込めた「灘駅弁」製作販売も
23-3

 

慈 憲一氏。神戸市灘区生まれ。大学から灘を離れそのまま就職するも震災を機に帰灘。見泥地区まちづくり委員会の復興委員会のお手伝いから、会長を2年努める。その後、灘愛をテーマに個人によるまちづくり活動を展開

 

■「看板屋」とデザインと景観とまちづくり(谷澤さんのお話から)
23-4広告と景観の問題の一つに、デザインができる看板屋が少ないということがあります。昔は看板屋に頼めば、「お任せ」である程度いい看板ができました。
今は看板のことをサインと言うようになり、デザイナーからデータが送られてくる、全国チェーン店は決まったフォーマットを印刷するだけ、印刷技術の進歩や素材の変化などにより、印刷屋が看板業界に進出したり、看板屋=取り付け屋のようにもなってきています。そこで、デザインもできる看板屋を育成するためサインクリエーターという資格と組織ができました。
また、看板屋としては、看板を計画する時期を改善していきたいと考えています。看板の設置位置や予算などの計画は、最後になることが多く、配線や施工の関係から、設置方法が限られる、時間や費用をかけられないなど、結果的に、いいデザインのものができにくいという側面があります。早い段階で看板も含めた計画ができれば、いい看板が増えると思います。
一方、景観と同じくらい気になることは、安全性の問題です。先日、北海道で看板の落下事故がありました。テナントが入れ代わる時、板面だけを替えることがほとんどで、躯体や取り付け部分はそのまま繰り返し利用されるため、躯体の耐用年数や安全性が疑われる看板が実は多くあります。
岡本では、景観まちづくりに取り組まれていますが、安全性の視点も合わせて働きかけることで、看板の更新を促進し、既存不適格物件の是正につながり、景観も安全性も高めていけると思います。
良い看板は街のアクセントとなるので、事前協議をして、より良いものにしていくことはとても意味のあることだと思います。業者に変更をお願いする際、専門知識があった方がいい場合もあります。屋内からの広告やプロジェクトマッピングなど規制の抜け道のような方法、安さや耐久性、加工のしやすさから多用される素材など、時代によって主流となる広告の出し方・素材・工法などがあるので、そういったこともお伝えしながらお役に立てればと考えています。
慈さんは灘、橋谷さんは岡本で、わがまちへの愛着がすごくあり、それがパワーの源になり、力強い活動に繋がっていることを実感しました。岡本版・屋外広告物ルール&ガイドラインの冊子を見た時は、素直にすごいと思ったし、とても驚きました。
岡本の取り組みは、全国の景観まちづくりをしている地域の参考になるし、広告業界からも注目もされていると思います。  今後もそれに応えていくための努力をされていくことと思いますので、私もお手伝いさせていただきたいと思っています。

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谷澤一憲氏。サインクリエーター協会常任相談役(元会長)/第16回技能グランプリ金賞受賞/平成21年度広告物設置優秀施工者国土交通大臣表彰/実業精励の一方、高校・専門学校の講師として後進の育成に尽力

 

■お話を聞いて
総会第2部で、特に印象に残ったのは、目からウロコの慈さんのお話です。
まちを楽しむ方法、新しいまちづくりの形を教えていただきました。自分がやりたいからやっているという考え方、「大好きな我がまちで『まち遊び』をしよう」、考えすぎないで「とにかくやってみよう」、というご提案だと思います。そして、遊んでいるように見えても、強い芯を持って活動されているように感じました。
誌面の都合で割愛しましたが、本当に数多くの企画を実施されています。費用持ち出し、損得勘定なし、パロディあり、駄洒落あり、ふざけているようで、どの企画も必ず灘愛を感じるものばかり。何より、慈さんご自身が楽しんでおられる様子が伝わってきて、私たちもこんなふうにまちづくりに取り組みたいと感化されました。
また、谷澤さんのお話からは、「看板屋」さんならではの視点、プロ意識や景観に対する思い、ジレンマのようなものも垣間見えました。今後、屋外広告物ルール&ガイドラインを運用していく際の手がかりを掴んだような気がしています。心強い応援を受け、知恵をいただき、ルール&ガイドラインに息を吹き込んでいきます!
今回、まちづくりの可能性、今後の活動のヒントがたくさん詰まったお話をいただきました。まちづくりについて考えながら、これから楽しいことが待っているような気がして、わくわくしているところです。

 

 

 

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