これからもずっと岡本で 落語家 桂南光 さん

岡本の秋のお楽しみ、桂南光古典落語会が、今年で十回を数えます。この節目の機会に、桂南光さんから、いろいろお話を伺うことにしました。
インタビューの場所は、南光さんが懇意にされている、とある古美術店。文化の香り漂う中で、和やかなひとときを過ごしてきました。

桂南光さん高座岡本の落語会 

 (インタビュアー) 今日は、ラジオのお仕事の後だそうで、おいそがしい中を、ありがとうございます。
(桂南光さん) 「どうぞよろしく」
早速ですが、岡本での落語会が始まったきっかけなど、お聞かせくださいますか。
「長年お付き合いを頂いている、この店のオーナー、廣岡さんが、岡本にお住まいという御縁です。阪神・淡路大震災後、復興していく地域を応援していこうという主旨で始まったんです」
岡本では、高座の設置も一門の皆様でやって頂き、手作りの会といった感じです。奥様も、裏方で会を支えてくださっています。内助の功と言いますか、僕はまだ一人なんですが、やっぱり結婚せなあきませんかね。
「いやいや。結婚なんて、するもんやありまへんで(笑)」
失礼を承知でお尋ねするんですが、関西では、落語家の人達は、テレビのバラエティーばかりやってるように思えます。あの人達が落語をすることは、少ないんですか。
「そんなことは、ありません。みんな、いろいろな場所でやってます。私ら、
呼ばれたら、どこでも行きますよ。以前、京都のお家に呼ばれて、そこで話したこともあります」
個人のお宅で……それはぜいたくな会ですねえ。さぞや立派なお屋敷だったんでしょうね。ところで、岡本の会場は、いかがですか。
「岡本は、いいですねえ。岡本公会堂くらいの大きさで、マイクなしで、後ろのお客さんまで、全員に声が届くのがいいです」
 マイクなしが、いいんですか。
「それはもう、マイクなしがいいです」
 正にライブですね。
「岡本の人は、反応がすごく良くて、前座から盛り上げてくれます。そういう空氣が、若い噺家の意欲をかきたてて、
彼等を成長させてくれるんですね」

南光さんと岡本

  落語会のチケットは、いつも前売りで完売です。おじいさんが、孫の手を引いて来場されたり、世代を超えて大人氣なんですよ。
「うれしいですね。岡本は、本当に喋りやすいんですよ。非常に、文化的レベルの高いところだと思います。聴いてくださる方の感性が高いと、こちらも触発されますね」
ありがとうございます。文化的レベルということですが、街の印象でいうと、具体的には、どんなことでしょう。 
「たたずまいの良い家や店が多いですね。私はコーヒーが好きで、自分でも豆を挽いて飲むんですが、岡本には、
おいしいコーヒーを出す店があったり、ワインの旨い、雰囲氣の良い店もあります。そういうところにも、街の人達のセンスが表われていると思います」
 美しい街づくりに長年取り組んできた私達には、何ともうれしい御言葉です。
「それから、私、カレーが好きなんですけど、何年か前、私の好きな大阪の店のカレーで、カレーパンを作ろうという企画のテレビ番組があって、岡本のドンクさんに、お世話になりました」
  あ、そのテレビ観ました!
「ところが、私の好きなカレーが、シャバシャバのルーで、それをパンに包むのが、大変やったんです。
パン用に、ルーを固めにしよかとなったんですが、カレー屋が、『それは困る』と……ドンクさんが、えらい苦労してくれはって、何とか完成したんですが、これが大評判になりました。けれど、あまりにもコストがかかって、商品としてずっと売っていくことは、できんと。期間限定というので、今はもう売ってません。私も、一個食べたきりですわ」
 (※そう言えば、あの頃、山手幹線の交差点で、派出な衣装を着た南光さんを見掛けたのを、インタビュー後に思い出しました。多分、あのときが、収録日だったんだなァ)
  奥様も甲南大出身ということで、南光さんは岡本に御縁があるんですね。ここに住む者として、何だか身近に感じます。今後も、末永く落語会を続けて頂きたいんですが……
「十年でも二十年でも、生命ある限り、続けさせてもらいますよ(笑)」

 

私の見た南光さん

インタビューにも同席頂いた、廣岡さんの御配慮で、リラックスした雰囲氣の中で、お話が伺えました。
南光さんと廣岡さんのお二人の会話からは、南光さんの、文楽や古書に関する造詣の深さが感じられました。古典芸能に関する豊富な知識や研究が、南光さんの落語に深い奥行を与えていることは間違いありません。
由緒あるお店の中であればこそ、テレビでは観ることのできない、もう一人の南光さんを拝見できた氣がします。
何も知らない素人の、不躾な質問にも、ちゃんと丁寧に答えて頂いたことには、1本当に感激しました。
写真もお好きだというので、図々しくも、私の『作品?』まで見てもらいましたが、さすがに困惑された様子。ごめんなさい。つい調子に乗ってしまいました。当日は、暑い日でしたが、南光さんは、涼し氣なストライプのシャツに、紺色のサマージャケットという出立ち。
白いコットンパンツの足許を、きっちりした作りの茶色の皮靴で締め、白いパナマ帽をひょいと頭にのせた姿は、おお、正に、夏の紳士ではありませんか!
最近では、めったにお目に掛かれない、ダンディズムの見本のようで、カッコ良かったです。
南光さんといえば、お若い頃からとてもオシャレでしたが、『あれは女房の好みですわ』と照れ笑い。『結婚なんて、するもんやおまへんで』と言いながら、夫唱婦随(ファッションでは、婦唱夫随?)
の睦まじさ……すっかりファンになりました。
今年の落語会は、十月三十日(日)です。十回記念の、お楽しみ抽選会もあります。(残念ながら、今年のチケットは、すでに完売となりました。来年は、お早めに。)

(構成・文 小田敏夫)

 

桂南光さん1桂 南光さん プロフィール

昭和二十六年生まれ 大阪府出身
昭和四十五年 桂 小米(故・桂 枝雀)に入門
芸名 桂 べかこ
昭和五十四年 上方お笑い大賞銀賞 受賞
昭和五十六年 朝日上方落語名人選
新人コンクール 優勝
昭和五十七年 日本放送演芸大賞
ホープ賞優秀敢闘賞 受賞
昭和六十一年 咲くやこの花賞 受賞
昭和六十二年 日本放送芸能大賞わだい賞 受賞
平成五年   三代目 桂 南光 襲名
平成六年   上方お笑い大賞 受賞
平成二十四年 大阪府四条畷市観光大使に就任

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